建物は地震にどこまで安全か? ~専門家と一般の方との橋渡し~


A23 耐震設計と耐震診断の違い

 

「耐震設計」とか「耐震診断」という名称は、地震に対する建物の安全を扱う場合によく耳にする言葉です。両者とも建物の耐震性について評価するもので、似たような響きを持っていますが、内容は大きく異なります。

ここでは、両者の基本的な違いに焦点を当て、できるだけ分かり易く説明しようと思います。

 

“設計”という用語を広辞苑で調べてみると、「ある目的を具現化する作業。製作・工事などに当たり、工費・敷地・材料および構造上の諸点などの計画を立て図面その他の方式で明示すること。」、“診断”は、「医師が患者を診察して病状を判断すること。転じて、物事の欠陥の無を調べて判断すること。」とあります。

 

表1 設計と診断

 

耐震設計は耐震診断の積み重ねのようにも感じますが、設計はあくまでこれから建物を試行錯誤しつつ目的を具現化する作業であり、診断は既にある建物の耐震性を調べる作業です。つまり、設計は建物の形状・材料はある意味これから自由に決められるものですが、診断は形状・材料は既に決まったものからの出発となります。

 

この違いが耐震性評価の精度に大きく関わってきます。とりわけ設計図書が残っていない場合の診断は、材料強度など不明な要素があるため評価精度は低くなることもあります。古い建物の診断の場合、特にこの点に注意する必要があります。

 

評価の基準、すなわち設計基準と診断基準とは、その成立過程が異なることもあり、方法論がかなり異なります。

 

また、耐震診断はその目的からしても診断の結果によっては次のステップ、すなわち耐震改修したり、場合によっては建て直しに進む場合もあります。

 

両者の違いを項目ごとに比較して表2に示します。

 

表2 耐震設計と耐震診断の違い

 

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