建物は地震にどこまで安全か? ~専門家と一般の方との橋渡し~


 はじめに

 

   ▶地震と建物の安全について、分からないことを易しく教えて欲しい皆様へ ☞ 講演依頼へ ≪受付中≫

 

   ▶自分の住んでいる建物やマンションの耐震性に、不安や疑問をお持ちの皆様へ ☞ 質問・相談へ ≪受付中≫

 

   ▶東京都の学校教育に関わる校長先生、教職員の皆様へ

講師は、小・中学校の児童・生徒を中心に学校における防災教育の支援を目的に、東京都教育庁人材バンクに登録し、講演・授業の依頼を受け付けています。ご要望がありましたら、本ホームページからもご相談に与りますので、講演依頼またはお問合せまでご連絡下さい。 

 

ホームページのねらい

 

首都直下地震や南海トラフ巨大地震が明日起きてもおかしくないと叫ばれ、世の中の関心は高まっていますが、「自分の家は大丈夫?自分のマンションは問題ない?」と気になっている人は少なからずいらっしゃいます。

 

一方で、その対策となると、「地震や建物の話しは難しい、専門家に任せておけばよい、法律を守っていれば大丈夫」と考えている人が多いのも実情のようです。

 

「地震に対する建物の安全」というテーマに、総合建設会社の構造部門に長らく従事してきた講師は、『建物を提供する側の専門家と、購入・使用する側の一般の方との間に、建物の安全に対する認識に大きな溝がある』ことを感じてきました。

 

一般の方(建築主、建物所有者・利用者など)は通常建築の素人であり、建物の安全に直接かかわる建築構造に関する知識は乏しく、それを得る機会も非常に少ないのが現実です。従って、いざ建物を建てる、マンションを購入する、建物の耐震性を調べてみようとするような場合、初めて専門家の話を聞いても、建物が地震にどこまで安全なのかなかなか理解しづらく、両者の間にどうしても溝が生じ易いのが現状です。

 

この溝を少しでも埋め、一般の方の理解を進めるために、講師は一般の方から小・中学生まで、要望があれば出向いて講演を開いたり(講演依頼へ)、日頃聞いたことはあるが良く分からないことの質問に回答するなど(質問・相談へ)して、とかく専門的で難しいと言われる地震に対する建物の安全について、これまで培った経験を生かして分かりやすく説明し、構造専門家と一般の方の橋渡しの機会がつくれれば、と考えこのホームページを開設しました。

 

時事コラム ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

2019年7月3日 「命の危険」

気象庁は7月2日、梅雨前線による大雨により、九州を中心とした西日本で記録的な大雨の見通しを発表しました。そして、これによる土砂災害に厳重注意するとともに、浸水や河川の増水、氾濫に厳重警戒するよう発表しました。同時に、各地で発表される避難勧告等に従って、“自分の命、大切な命”を守るために早目の避難、安全確保を、という異例の呼びかけをしました。これは、警告を発する側の防災・減災力の限界を意味したもので、”自分の命を守るのは自分自身”、という災害に向き合う際の根本的な理を改めて伝えたものと理解できるのではないでしょうか。

一方で、近く予想される首都直下地震では2万人以上、南海トラフ巨大地震では32万を超える死者が予想されている現実があります。いつくるか分からないとはいえ、“自分の命、大切な命”を守るための大地震に対する備えは、切迫する明日の危険に対する備えと同じように、一人一人が早め早めにしておくことを忘れないよう心掛けたいものです。

 

2019年6月21日 山形県沖で最大震度6強の地震~大阪府北部地震からちょうど一年

2019年6月18日22時22分、山形県沖を震源とするマグニチュード6.7の地震がありました。この地震により新潟県村上市で最大震度6強を記録、津波注意報が発令され間もなく解除されました。

この日は、ちょうど一年前に大阪府北部を震源としたマグニチュード6.1、最大震度6弱の地震が起こった日です。ブロック塀の倒壊で通学中の女児が命を落としています。

マグニチュード6クラスの地震は、日本中いつどこで起きても不思議ではないということを改めて示した出来事でした。

新潟県や山形県では、被害を受けた建物の「応急危険度判定」が行われ、528棟の調査のうち63棟が最も危険度が高い「危険」と判定されました。また、立ち入りに注意が必要な「要注意」の建物は115棟あり、ほとんどが屋根の瓦のずれや落下のおそれによるものだということです。

「危険」は、建物に立ち入ることが危険と判断されるほど被害が大きかったものです。地震による建物の損傷は、耐震診断や耐震改修によりかなりの程度予防できるものです。地震を受け「危険」と判断されないような準備を進めたいものです。

 

2019年5月13日 建築主の責任と役割

日本建築学会シンポジウム「建築工事における建築主の責任と役割」に参加しました。

建築工事において、設計者や施工者は専門の知識・経験を十分持つ専門家であるのに対し、一般的に建築主はその持ち合わせの少ない非専門家であるため、設計や施工の過程において両者の考えにすれ違いが生ずると、建築主の意向が過剰に主張されたり、専門家の責任が必要以上に問われ、トラブルのもととなることが最近増えてきました。これは専門家である医師と非専門家である患者との間に生ずる、ここ十年来富に増えてきた医療訴訟の様相に似ているともいわれます。このようなトラブルを少なくするためには、専門家は建築主に十分丁寧な説明をして理解を得、その記録を残しつつことを進める役割が求められる一方、建築主は専門家の説明を聞いて理解し、自ら判断する役割と責任がある、ということでしょう。「建築主は専門家に任せておけば安全で思うような建築ができあがります、専門家は自分に任せてくれれば良い建築ができあがります」、という両者の関係世界は成り立たない時世になっていることを示しているようです。

 

2019年4月16日 熊本地震から3年  

震災関連死を含めて273人が犠牲になった熊本地震から今日で3年を経過しました。いまだに1万6519人の被災者が仮設住宅で暮らしているといいます。九州は地震が少ないといわれ、耐震設計をする際の地震の大きさを決める地震地域係数も小さな九州で、このとき震度7が初めて二度生じました。本震か、余震かの判断が難しくなったため、これ以降、気象庁では余震という用語をあまり使わなくなりました。木造住宅の全壊数は500棟を越え、2000年の改訂基準を満たさない新耐震住宅にも被害が生じました。これにより、木造住宅では特に柱頭柱脚の接合部に十分注意を払わなければならないことを改めて認識しました。東日本大震災のあまりにも大きな災害につい目を奪われがちですが、過去の地震災害から学んだ知識を改めて心に留める熊本地震3年目です。

 

2019年1月15日 免・制震データ改ざん問題の解決策  

免・制震データ改ざん問題に関する日本学術会議公開シンポジウムに参加しました。

建築用制震オイルダンパー(O.D.)の嚆矢となる開発に携わった者として、データ改ざんの手口は巧妙で、立合い検査に居合わせてもその偽装は見抜けない、との印象を持ちました。免震も制震も装置メーカーを信用しなければ開発は成り立ちません。それは開発当初業界の共通認識でありモラルでした。その後にこの前提が崩れてしまったことに、私を含め初期の開発に携わった参加者の多くは失望を隠せませんでした。

同様のことは、建築に限らず屈指の自動車メーカーでも起こっています。これまで日本の良き伝統でもあった、ものづくりに拘る技術者の誇り、倫理が失われたとは思いたくありませんが、悲しいかな認めざるを得ない時代になってしまったようです。

背景には、装置のコスト、納期に対する厳しいビジネス環境とか、他の工業製品と異なり地震が来ないと装置性能の不備が顕在化しない建築特有の特殊事情、等々あったことが指摘されていますが、不正を許せば企業の信頼を失墜するのは自明のことです。

今後こうした問題を起こさぬために、シンポジウムでは次の提案がありました。(1)第三者による抜き取り検査の実現、(2)大型製品の実大試験施設の導入、(3)共有の大型試験設備を持つ検査機関の設置。

 

2018年12月12日 ブロック塀の耐震診断を進めましょう

大地震時の緊急輸送道路等に隣接するブロック塀等に対する耐震診断の義務付けが、平成31年1月1日から施行されることになりました。

昭和53年宮城県沖地震ではブロック塀等の倒壊による圧死が18人にのぼり、これを機に初めてブロック塀の安全について注意深い配慮がされるようになりました。しかし、その後の昭和62年千葉県東方沖地震、平成17年福岡県西方沖地震、そして今年6月の大阪府北部地震でも小学生の尊い命が失われ、被害がなくなりません。

ブロック塀は便利なため、身の回りで目に触れる機会も多いですが、内部の鉄筋の入り方や基礎の状況などが塀の危険性を左右するため、安全かどうかを外見のみから判断するのが難しいものです。放置されたまま、一旦転倒でもすると重大な被害になる可能性があります。

人通りの多い所のブロック塀で、古く、ひび割れ、鉄筋の錆汁、ぐらつき等があって心配なものがあったら、一度専門家に診てもらい、塀が一体になっているか、倒れやすくないか等、診てもらうことを推奨します。

参考:ブロック塀等の点検のチェックポイント

 

2018年10月29日 KYBオイルダンパー(続)

国土交通省より、KYB及びカヤバシステムマシナリー(同社)の製造したオイルダンパー(O.D.)の導入に関わった建築物の設計者等に対し、同社から構造安全性検証作業協力の依頼があった場合は、これに協力するよう事務連絡がありました。これにより、同社が製造したO.D.のうち、国の基準や設計仕様を満たさないO.D.については判明している試験データに基づいて、又データ書き換えが不明なものについては予想される実際のデータに基づいて、構造安全性の検証がやり直されることになります。

O.D.を使用した建物を所有、利用している方は、建物売主や設計、施工者等から、構造安全性に関する説明や上述の構造安全性の検証結果の説明を受けることができるようになります。関心や不安のある方は、これら関係者に問合せることをお奨めします。

 

2018年10月18日 「世界の都市総合力ランキング2018」…東京は魅力ある危険な都市?

(一財)森記念財団都市戦略研究所から「世界の都市総合力ランキング2018」が発表されました。これは国際的な都市間競争において、人や企業を惹きつけるための総合力をランク付けしたもので、1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位東京、これにパリが続いています。

一方、スイスの再保険会社スイス・リーは2013年、「自然災害で最も危険な都市ランキング」を発表し、1位東京・横浜、2位マニラ、3位広州・香港・マカオ、としています。

首都圏では、30年以内の発生確率が約70%といわれている首都直下地震の予想被害は、死者2万7千人、経済被害は間接被害も合わせると国家予算にも匹敵する100兆円に届くとも見積もられています。

都市総合力ランキングと危険な都市ランキングの上位に、2020年にオリンピックを迎える東京がともに入っていることに、とても違和感を感ずるのは私ひとりではないのではないでしょうか。

東京を考えてみると、総合力ランキングは健常者と余命半年を宣告された癌患者が、見た目の力比べをしているようなもの。ほぼ間違いなくやって来るであろう大地震を眼中から外さないよう日々の生活を続けたいものです。

 

2018年10月16日 KYBオイルダンパー

オイルダンパー(O.D.)メーカー“KYB”が、これまで1000棟近い建物に納入した免震、制震O.D.の性能を偽装していたことが発表されました。

総合建設会社において、オイルダンパーを初めて建物に利用する研究開発に携わった者のひとりとして極めて残念な出来事です。O.D.は建物の安全性を向上できる優れた技術手段です。

オイルダンパーを使用した建物の安全性チェックは、通常その建物を設計した建設会社や設計事務所において実施が可能な作業です。KYBは納入したO.D.が規定値を満たしていなかった場合、実際の正確な出荷試験データーを設計者に提示し、建物の安全性チェックの作業を迅速に進める努めが求められます。

KYBはO.D.のリプレイスを進めなければならないことは勿論ですが、建物の安全性チェックを逸早く完了し、建物利用者そして社会を安心させて欲しいです。そして、免震・制震技術の要の装置のひとつであるO.D.の信頼を回復し、所期の安全な建物の実現に貢献することを心から願っています。

 

2018年10月14日 今、防災教育に足りないものは何か?

ぼうさいこくたい2018 防災教育交流フォーラム「今、防災教育に足りないものは何か?」(主催:(一社)防災教育普及協会)が東京ビッグサイトにおいて開催され、これに参加しました。

著名な出演者らから、次のような不足点が指摘されました。

・ 学校教育において、現場の先生は教科の消化に追われ、防災教育に割く時間が不足。

・ そのため、学校では専任者や専門家に任せきりの傾向。

・ 防災の教科化が是非必要。

・ 学校、家庭、地域において、防災教育のすそ野を広げる。

・ 大人への教育が不足。生涯教育が大切。

・ 防災の基本知識(信号で言えば、赤・青・黄の意味)と基本行動の徹底。

・ 防災はそもそも非日常を扱う正解のない問題。また、人生は危機の連続。

  これはまさに、学習指導要領にある「生きる力」の核心でもある。

余禄:先日、近くの交差点で、救急車がサイレンを鳴らし交差点を通過しようとしていた時、歩行者信号の青が点滅し始めた横断歩道をあわてて渡ろうとしていた子供が救急車の前を横切り、救急車は速度を落としました。信号は青でも、「緊急車両が警報を発して通行していた時は、緊急車両が優先される」という非日常のルールも、応用問題として教えておく必要があることを感じました。》

 

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