建物は地震にどこまで安全か? ~専門家と一般の方との橋渡し~


A.2 建築法規を守っていれば大地震にも安全な建物ができますか?

 

建築基準法は安全の最低規準

 

建物がどのくらい安全であれば良いか、その基準を定めたのが建築基準法です。全ての建物は、これを守って建てられています。そして、建築基準法は建物に“安全の最低基準”を満たすよう求めています。

最低が意味するように、決して“望ましい”基準を定めたものでも、“心配ない”基準を定めたものでもありません。これ以下ではいけないという、まさに最低の基準を定めたものです。

 

最低基準の安全レベルとは?

 

それでは、“最低基準”というのは、どのような安全レベルを目標としているのでしょうか?それを具体的に示しているのが建築基準法施行令です。

 

表に示すように、建築基準法施行令では・・・、

 

「稀」に起こる地震に対して、建物は「損傷しない」ことを目標としています。

ここで、「稀」な地震とは、建物が使われている期間中に数回程度起こる地震、一般的には数十年に一回起こるであろう中程度の地震を意味します。この地震に対して建物は「損傷しない」、つまり地震後も建物は使い続けられることを目標としています。もちろん、この地震で人命が損なわれるようなことはないとされています。

 

一方「極めて稀」に起こる地震に対して、建物は「倒壊・崩壊しない」ことを目標としています。

ここで、「極めて稀」な地震とは、建物が使われている期間中に1回あるかないかの大地震、一般的には数百年に一回起こるかもしれない最大級の地震を意味します。この地震に対して建物は「倒壊・崩壊しない」ことを目標としています。これは、極めて稀な大地震に対しては、建物は壊れても倒壊・崩壊しなければ(柱が潰れたり、上の階の床が落ちてこなければ)人命が損なわれることのないであろうという、人命の保護を優先的な目標にしたものです。これはまた、建物に大きな損傷が生じることを許していることを意味しています。

 

これらの目標を達成するために、各種の技術基規準が作られ、これをもとに建物が設計されています。

 

建築法規ギリギリの設計をすると・・・、

 

設問にもどると、「建築法規を守っていれば大地震にも建物は安全です。」という表現は、正確を欠く誤解を招きやすいことが分かります。

 

つまり、現在の法規というのは、これを守っていても、余裕のないぎりぎりの設計をすれば、大地震に対して壊れたり潰れたりすることは避けられるものの、場合によっては損傷が大きくなり修理しても再使用できず建替えにさえなる可能性もあるというものです

 

これ以上の安全を求めるならば、言い換えれば大地震でも人命は守れるのはもちろん地震後も修復すれば再使用できるような安全を求めるならば、それに相応し建物となるよう設計、施工することが必要となります。その方法については「耐震性能グレード」の項目でお話します。

 

首都直下地震や南海トラフの巨大地震がいつか来ると叫ばれています。地震の後も暮らしは、社会は続きます。建物がどのような安全レベルに保たれ造られているか、建物を建築する人(建築主)、購入する人(所有者)、利用する人(居住者)は、これを正しく理解して建物と付き合い、より安全な住まい・街を造っていくことが求められる社会になっています。